相続税の相談、遺産相続の相談は相続税専門の長嶋佳明税理士事務所へ。兵庫県芦屋市・西宮市・神戸市に対応しています。

遺産相続税相談室|長嶋佳明税理士事務所
相続専門FPの税理士長嶋佳明が語る『お金』事情

【遺産相続税相談】借金をして賃貸マンションを建てれば相続税の節税になる?

  • 2009/02/15

先日、次のような遺産相続税に関するご相談がありましたのでご紹介します。
なお、家族構成などその他の内容について、実際のものに修正を加えています。

 

 

【ご相談内容】

銀行と不動産会社から、「借金をして賃貸マンションを建てれば相続税の節税になります」という相続税の節税の提案を受けています。
相続税の節税の本を読んでみても、同じように「相続税の節税になる」と書いてあります。
借金をして賃貸マンションを建てれば、本当に相続税の節税になるのでしょうか?

 

 

【結論から申し上げると・・・】

結論から申し上げると、半分正解、半分不正解です。
・何が正解なのか?
・何が不正解なのか?

を順番にお話させていただきます。

 

 

【賃貸マンションを建てることが相続税の節税になる理由】

例えば、
・現金 5000万円
・土地 5000万円
を持っているAさんがおられるとします(例1)

相続財産=5000万円(現金)+5000万円(土地)=1億円になります。

 

現金5000万円を使って、賃貸マンションの建築をすると、相続税の評価は次のようになります。
・賃貸マンション(貸家)の相続税評価=固定資産税評価額×(1-借家権割合)
・土地(貸家建付地)の相続税評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合)

 

具体的な数字を入れて計算をしますと、
現金→賃貸マンション(貸家) 5000万円×60%(建築価格の60%程度が固定資産税評価額)×(1-0.3)=2100万円
土地           5000万円×(1-0.7×0.3)=3950万円

相続税を計算するときの相続財産=2100万円(現金)+3950万円(土地)=6050万円

賃貸マンションを建てることで、3950万円(1億円-6050万円)の相続税の評価額を下げることができました。
仮に、相続税の税率が50%とすると、1975万円の相続税の節税となります。

確かに、賃貸マンションを建てると相続税の節税になることがわかります。

 

 

【借金をして賃貸マンションを建てることが相続税の節税になるのか?】

・現金 5000万円
・土地 5000万円
を持っているAさんが、5000万円の借金をして、5000万円の賃貸マンションを建てたとします(例2)

 

・現金(借入金)→賃貸マンション(貸家) 5000万円×60%×(1-0.3)=2100万円
・土地                      5000万円×(1-0.7×0.3)=3950万円
・現金(元々持っていた現金)                            5000万円

相続税を計算するときの相続財産の合計=2100万円+3950万円+5000万円=1億1050万円
純粋な相続税を計算するときの相続財産=1億1050万円-5000万円(借金)=6050万円

上記からわかるように、例1も例2も結果は同じです。
つまり、借金はしてもしなくても相続財産は同じですので、借金があっても相続税は1円も下がらないことがわかります。

 

 

【借金があると相続税の節税になるのか?】

このことは、「借金があると相続税の節税になるのか?」と同じことが言えます。
仮に、現金5000万円を持っているBさんが、銀行から5000万円の借金をしたとします。

<借金をする前>
相続財産=5000万円(現金)

 

<借金をしたとき>
相続財産=1億円(現金+借金で増えた現金)-5000万円(借金)=5000万円

つまり、借金をする前と後でも、相続財産は同じです。

 

 

【借金をして賃貸マンションを建てることが相続税の節税になる理由】

借金をしたから、相続税の節税になったのではありません。
現金が、相続税を計算するときの相続財産で割引計算される「賃貸マンション」に変わったから、相続税の節税になったということです。

<まとめ>

賃貸マンションを建てることの相続税の節税

相続財産 借金をしない場合 借金をした場合
 現金  5000万円
 土地  3950万円  3950万円
  建物   2100万円   2100万円
 借金  -5000万円
相続財産の合計 6050万円 6050万円

 
借金をしてもしなくても相続財産は同じです。

 

 

【持っている現金を他の相続税の節税商品に変えると・・・】

借金をして賃貸マンションを建てて、元々持っている現金を他の相続税の節税商品に変えることで、さらに相続税の節税になります。
この手法はバブル期に多く使われており、その代表的な相続税の節税商品が「変額保険」です。
借金をさせて変額保険に加入させる、銀行にとって相続税の節税の提案は丸儲けの商売だったのです。
その後バブルが弾け、「銀行は公的資金で救済され、借金を背負わされたのは顧客だった」というのが、これまでの歴史で語られているところです・・・

 

 

【銀行や不動産会社が借金を勧める理由】

銀行や不動産会社が借金をして、相続税の節税を勧める理由。
それは、銀行や不動産会社の仕事になるからです。
<銀行の営業トーク>
借金すれば、債務控除になるので、相続税の節税になります。
→融資をすることになりますので、銀行員の営業成績につながる

<不動産会社の営業トーク>
賃貸マンションにしたほうが、相続税の節税になります。
→賃貸マンションを建てることで、営業マンの営業成績につながる

 

賃貸マンションを建てることで相続税の節税になる。
銀行も不動産会社も相続税の節税という意味では、一応の正解は言ってくれますが、
・お金を融資する(銀行)
・賃貸マンション建設(不動産会社)
は、自身の仕事の話しかしてくれていません。
賃貸マンションを建てることで、他にどんな影響があるのかまではアドバイスをしてくれないことが多いと思います。
相続について考えるときには、相続税の問題だけでなく、相続の全体像を把握することが大切だと思います。

お問い合わせ
プロフィール メディア取材・掲載情報

相続これから
相続対策の考え方
遺産分割の考え方
争続となる事例
生前贈与の活用
遺言書の存在が争いの素に
相続こまった
相続手続一覧
遺産分割の工夫
相続そのあと
税務調査
相続税を取り戻した事例
ご契約後の流れ
報酬について
相続税の実情
税理士の選び方
相続専門FPの税理士長嶋佳明が語る相続事情
遺産相続、老後の年金・医療、生命保険、住宅ローンなど、皆様の生活に密着するおトクな情報を発信するブログです。

HOME事務所理念事務所案内業務内容お問い合わせサイトマップリンク集ブログ

遺産相続税相談室|長嶋佳明税理士事務所

copyright © 2007 All rights reserved 遺産相続税相談室(兵庫県芦屋市)